2026年10月、フィンランド・エスポー市の公立高校から4人の先生方が、日本の名古屋市と大阪府にある私立高校を訪問しました。UpEdはこの交流を繋ぐお手伝いをささやかながらさせていただきました。
日本からフィンランドに向けた交流や視察サポートを行うことが多い私たちですが、今回はフィンランドの先生方が日本を訪れるという、とても喜ばしい機会!私(杉山)自身は今回現地へ同行することは叶いませんでしたが、それぞれの学校で温かく迎え、献身的にサポートしてくださった先生方のおかげで、この素晴らしい交流を実現させることができました。本当にありがとうございます!
現地から届いた熱気あふれるレポートをもとに、当日の様子をお届けします。

名古屋市の私立高校:オンラインから紡いだ絆と、「自由と責任」への気づき
名古屋の高校では、とても情熱的な英語科の先生が先導して受け入れを担当してくださいました。(実は杉山の前職時代の先輩の元同僚というご縁があり、2025年に直接お会いしたところからこのプロジェクトがスタートしました!)
この交流の素晴らしいところは、当日いきなり対面するのではなく、事前に2回のオンライン交流を重ねて段階的に理解を深めていった点です。
第1回目のオンライン交流は「Mystery Session」。生徒たちが「北半球にありますか?」「国旗に青は入っていますか?」などと英語でYes/Noクイズを投げかけ、画面の向こうの先生がどこの国にいるのかを推理しました。英語を話すこと自体が目的ではなく、「知りたいことを知るために英語を使う」という自然なコミュニケーションが生まれ、見事「フィンランド!」と正解に辿り着いた瞬間には教室中に大きな歓声が響いたそうです。
第2回目は、学校生活の比較へ。宿題の量や高校まで無料の給食といった日本の生徒にとって意外な事実から、一方で大学進学に向けた厳しい試験があるという共通点まで、多角的な視点でフィンランドの教育を見つめ直しました。
そして迎えた対面当日。フィンランドの先生方によるスライド紹介では、廊下にビリヤード台があったり、ウェイトトレーニング器具が置かれていたり、無料でコーヒーが飲めたりと、日本の高校とはまったく異なる光景に生徒たちは驚きの連続だったようです。生徒たちからも日本の学校ならではの文化を紹介し、双方向のあたたかいやり取りが生まれました。

後半に行ったのは、実際のカリキュラムを使って「自分がフィンランドの高校生だったらどんな1週間を過ごすか」を考える時間割作成ワークショップです。

自分で履修科目を選べる仕組みは、一見すると「楽で自由そう」に見えます。しかし、実際にペンを動かし始めると、生徒たちの表情は真剣そのものに変わっていったといいます。「将来自分が何をしたいのかが決まっていないと、科目が選べない」「選択肢が多いということは、自分の選択に責任を持たなければいけない」という現実に直面したからです。


フィンランドの先生方からも「自らの学びに責任を持つこと」の大切さが伝えられ、自由とは単に制約がないことではなく、自分で決めてやり抜く力なのだという本質的な気づきが、生徒一人ひとりの胸に深く刻まれる時間となりました。
大阪府の私立高校:教育の根幹を語り合う対話と、心温まるおもてなし
大阪では、2026年3月の教育プログラムに参加してくださった社会科の先生が交流を実現させてくれました。自らウェブサイトを構築して「教材保管庫」を作られたり、3月のフィンランドに続いて8月にはデンマークの学校訪問を行ったりと、行動力と志に満ちた本当にアツい先生です!
朝の校長先生への挨拶から始まり、夜の懇親会まで一日をかけて密度の濃い交流が行われました。高層(なんと11階建て!?)のダイナミックな校舎を歩きながら情報、調理実習、美術、書道など多彩な授業を見学し、昼食には学校名物のカレーを一緒に味わうなど、日本の活気ある教育環境を丸ごと体感していただきました。
特に深く印象的だったと報告を受けたのが、午後に行われた先生同士の意見交換会です。予定されていた2時間はあっという間に過ぎ、議論のテーマは自然と「そもそも何のために教育をするのか」という根源的な問いへと深まっていきました。 そこでフィンランドの校長が口にしたのが、「生徒によく(well)生きてほしいからだ」という信念でした。
すると日本の先生たちから、「じゃあ、その『良い(well)』って一体何だろう? テストで点数を取ることなのか? それとも良い人生を歩むことなのか?」という鋭い問いが投げかけられ、互いが目指す『良い』とは何かをめぐって白熱した議論へと発展していきました。 フィンランドでも共通試験があり、知識を身につけるための勉強は避けて通れません。けれど、フィンランドの先生は「知識を得ることはあくまで通過点であり、最終的に目指しているのは、生徒一人ひとりが自分の足で良い人生を歩んでいくことだ」と語ってくれたそうです。テストや評価のあり方に葛藤しながら日々現場に立つ日本の先生方にとっても、教育の原点に立ち返るような深い共感が生まれた瞬間でした。
また、校内を巡る中で触れた日本の生徒たちの姿も、フィンランドの先生方の心を強く揺さぶりました。
音楽会に向けて練習をしていたクラスの前を通りかかった際には、先生たちの来訪に気づいた生徒たちが急遽その場で美しい合唱曲を披露してくれました。教室いっぱいに響き渡る息の合ったハーモニーのプレゼントに、先生方は息を呑み、感動されていたとのことです。
放課後の部活動見学でも、日本ならではの真剣な熱気と温かいもてなしに出会いました。柔道場に足を踏み入れた瞬間に部員たちがサッと駆け寄って椅子を並べ、深々と挨拶をしてくれた礼儀正しさ。
本格的な土俵のすぐ脇に正座して息を呑んだ相撲部の迫力ある稽古。

そして野球場では、全員が爽やかな挨拶で迎えてくれただけでなく、エース投手がブルペンで迫力ある投球を実演し、グローブに触れさせてくれたり、記念のボールを手渡してくれたりしました。仲間と一つになって打ち込むひたむきな姿と、相手を敬う所作の美しさは、先生方にとって鮮烈なカルチャーショックとなったようです。

違いに出会い、自らの学びを見つめ直す
教育の制度やアプローチは国によって異なりますが、互いの現場を訪れて直接言葉を交わすことで、自らの教育や学びのあり方を客観的に見つめ直すことができます。
フィンランドの教育が大切にする自律と「よく生きること」への眼差し、そして日本の学校が育む仲間への敬意やひたむきな熱量。海を越えて現場の先生と生徒が直接出会ったからこそ、お互いの良さに気づき、自らの足元を見つめ直す豊かな時間が生まれました。
UpEdは、これからも日本とフィンランドをつなぎ、教育の未来を共に考え、刺激し合えるような本質的な対話の場を届けていきたいと思います。

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